2026年3月31日(火)鑑賞 イオンシネマ岡崎(スクリーン10 H-8)
2026年3月27日(金)公開 / 上映時間:116分 / 製作:2026年(日本) / 配給:クロックワークス
【監督】 中川駿
【キャスト】
 藤村佑:山時聡真 / 藤村美咲:菅野美穂 / 松田杏花:南琴奈 / 大平翔太:田中偉登 /
 下村香織:西野七瀬 / 荻野みかん / 朝井大智 / 藤本沙紀 / オラキオ / 金澤美穂 /
 市原茉莉 / 少路勇介
【あらすじ】
母子家庭で育ち、小学生の頃からバスケットボールに打ち込んでいた佑(山時聡真)。高校2年の時に母・美咲(菅野美穂)が難病を患い、母の世話を優先するためバスケットボールを辞める。介護ヘルパーの支援を受けながら、美咲のケアや家事をこなし、東京の大学進学を夢見ていた佑だが、母をひとり残して上京する現実に葛藤を抱えていた。美咲を一人にするわけにはいかず、常に手元にある呼び出しチャイムの音が、佑の心を引き留める。その看病が一生続くかのように、自分の夢や希望はすべて諦めかけていたが、担任教師から自己推薦による受験を勧められる。しかし、美咲が日に日に身体の自由を失っていく姿を前に、佑は上京したい気持ちを打ち明けられずにいた。そんなある日、介護施設のケアマネジャー・下村(西野七瀬)からヘルパーの増員により24時間ケアの体制が整ったことを告げられる。我が子の明るい未来を願う美咲は「お母さん、大丈夫だから。好きなようにしていいからね」と優しく声をかけるが・・・
【感想】
難病の母親と息子の話と言うことで暗く重い内容を想像して、観に行こうかどうか少し迷っていたのですが、迷った時は観ておいた方が後で後悔しないと思って、ひとりで観に行ってきました。

結果的には、家族と一緒に来ればよかったと思わせてくれる感動的でとても優しい素晴らしい映画でした。重くなりがちの家庭内の話と、佑と杏花の高校での普通の高校生らしい話が絶妙で、懸念していた重苦しさもまったくなく、母親と息子のお互いを思う優しさと葛藤や、突然バスケットボールをやめた佑に対する杏花や翔太などバスケットボール部のメンバーとの確執と友情が、とてもいいバランスで描かれていました。佑が、母親を思いながらもいろんなことをため込んでいく苦しさや、バスケットボール部をやめる理由を自分の心の中だけに閉じ込めて友人を遠ざけてしまうとか、そういうところをとてもリアルに山時聡真が演じていました。実際のヤングケアラーの人たちも、自分の中に負担の大変さを閉じ込めて諦めて壊れていくのかなと思ったりしました。そういう佑を出しゃばらずに佑の判断を促すことで力になる杏花を演じていた南琴奈も素敵でしたし、佑が無理をしていることを心配しながらケアマネージャーとして静かに見守って力になっている下村を演じる西野七瀬も素敵でした。そして母親役の菅野美穂は、元気な姿は最初のワンカットだけで、その後は病床での姿だけでしたが、ALSという病にもかかわらず、佑が近くにいてくれる幸せと、佑がやりたいことをするために遠くに行くことの寂しさの狭間で、息子のことを一番に考える強さと優しさを持った母親を見事に演じていました。この俳優さんたちだからこそ成り立った空気感によって、物語がとてもリアルに感じて話の中に入り込むことができて、あっという間の2時間でした。

印象に残るシーンはあげればきりがないほど随所にありました。佑が杏花にバスケットボールをやめた理由を話すシーン、佑と美咲が会話をしていた時に画面が暗くなり会話だけになり美咲の声が元気になっていくシーン、元気になった夢を見た美咲が起きて夢じゃなかったらと言うシーン、呼吸器をつけることになるかもと嘆く美咲にまだすぐに考えなくてもいいと下村が話すシーン、東京での佑の面接のシーン、佑が東京に行く日の美咲の複雑な感情をみせるシーン、下村が佑に美咲とヘルパーで作成したレシピ帳を渡すシーン、その他にもいっぱいありました。

この映画は、家族の介護という問題とともに親子の愛情をテーマにしていますが、もしそんな状況になったら、お互いがしっかりと会話し相手を思うことの大切さも感じましたし、会話ができない状態だったらどう考えればいいのかとか、話ができても苦労や負担のほうが強く感じてしまったらどうすればいいのかとか、いろいろと考えさせられました。自分の母親がすこしボケてきただけでイライラとしていた自分を思い起こし、家族の愛情を持ち続けることの難しさを感じました。そういう時のために、健康で普通の会話ができている時に、しっかりと話をしてお互いの愛情や大切さを深めておくことが一番大切なのかもしれません。

なお、タイトルの「90メートル」は、佑と美咲を結んでいて縛り付けていた物理的なものの距離。でも、それは愛情には関係なくて愛情には距離なんか関係ない・・・そんな象徴的ことを伝えるものなのかなと思います。

全体的にじわじわと感動や優しさがあふれていてジーンと胸が熱くなり目が潤んでくる映画でした。もう一度家族で観てみたいと思ってしまって、ひとりで観に行ったことを悔やむほどの素晴らしい映画でした。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。