2025年5月27日(火)開始 2025年6月4日(水)読了 |
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作品情報
タイトル |
あなたの人生、片づけます |
著者 |
垣谷美雨 |
シリーズ |
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初刊出版社 |
双葉社 |
レーベル |
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初刊発行日 |
2013年11月 |
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書籍情報
出版社 |
双葉社 |
レーベル |
双葉文庫 か-36-06 |
判型/ページ数 |
文庫判/336ページ |
初版発行日 |
2016年11月13日 |
版数 |
第44刷 |
発行日 |
2024年10月15日 |
定価(本体) |
648円 |
購入日 |
2024年12月30日 |
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【あらすじ】
社内不倫に疲れた30代OL、妻に先立たれた老人、子供に見捨てられた資産家老女、ある一部屋だけを掃除する汚部屋主婦。片づけ屋・大庭十萬里は、物を捨てられない、片づけられない住人たちの前に現れる。
詳細は下記の通り。
クリックして詳細を表示(ネタバレ注意!)
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ケース1 |
清算 |
大手生命保険会社の広報部で働く永沢春花、32歳独身一人暮らし。母親の依頼で大庭十萬里が片づけ指導を請け負う。春花の部屋は、ゴミやものが散らばる汚部屋。春花は結婚している男と付き合っており、離婚するから結婚してほしいと言われて5年が過ぎていた・・・ |
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ケース2 |
木魚堂 |
半年前に妻に先立たれた木魚職人の国友展蔵、60歳台一人暮らし。娘・風味子の依頼で大庭十萬里が片づけ指導を請け負う。展蔵は、家事をすべて妻がしていたために、自分では何もできないと通ってきてくれている風味子に頼り切っている・・・ |
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ケース3 |
豪商の館 |
田舎で離れのある広い家に住んでいる三枝泳子、78歳一人暮らし。娘の睦美の依頼で大庭十萬里が片づけ指導を請け負う。昔は人が集まった家には、今は息子・英樹も睦美も忙しくて足が遠のいている。広い家にはたくさんの収納場所があり、ものは整然と片付けられているが・・・ |
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ケース4 |
きれいすぎる部屋 |
夫と二人の娘と暮らす池田麻実子、40歳台半ば。夫の母親からの依頼で大庭十萬里が片づけ指導を請け負う。麻実子の家は国家公務員宿舎。ひとつの部屋をのぞいてはものが乱雑に散らかっており、麻実子は家事をまったくしていない様子。ふたりの娘も自分の世界に閉じこもっている・・・ |
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【感想】
いろいろと考えさせられるいい小説でした。大庭十萬里という片付け屋は代行掃除屋ではなく、じっくりとその家の状況を見て、本質的なところの問題を片づけていくという片付け屋です。単なる片付け指南の話ではなく、片付けができていない人の心には何があるのかを知ったうえで、どうすればその心を片付けることができるのかという話でした。掲載の4つのケースはそれぞれ普通にありうるケースで、十萬里の対応を通して、結婚相手に対する考え方、家族を思いやる心、自分が死んだあとのこと、大きな悲しみを受けた人への対応、そんなことを深く考えさせてくれました。
この作品を読むと、「片付けろ」、「整理整頓しろ」、「だらしない」と責め立てることは、たぶん悪循環に陥る対応なのだと思います。将来を考えられなくなっているから、片付けなどどうでもよいと思ってしまっているのであって、そこに「だらしない」なんて言われると、さらに自分はダメだと落ち込んで何もできなくなるのだと思います。いかに将来へ目を向けさせるかということが、片付け、特に心の片付けには一番大切なのだと教えられました。
私の家もいろいろと心の問題で片付いていないです。そうなったのも私のせいだという自覚もあります。自分がイライラするから「片付けろ」と強く言い続けて、それが家族の将来の希望をなくしていたのかもしれないということも悟りました。この本を読み始めた時は、家族にも読ませたいと思っていましたが、この本は片付けられない当事者が読むのではなく、まわりの人が読むべきものなのかなという気もしてきました。この本を読むことで大庭十萬里と接するのではなく、見守る私が大庭十萬里の存在になる、そういうことなのかと思いました。
ケース4では、大切な人を亡くした人の思いや接し方がとても勉強になりました。力づけようとする言葉のほとんどが、心に届いていないどころか傷つけていることが多いのかも知れません。涙無くしては読むことができない内容でした。大きな悲しみを持つ人を元気づけようとすることは、その悲しみを知らない大きな驕りなのだと思いました。その悲しみは時間が癒してくれることなど無く、一生、乗り越えられないものだと知るべきで、話を聞いて寄り添う、それが一番大切なのだと知りました。忘れないようにしたいと思いました。 |
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。 |
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