2025年5月7日(水)開始 2025年5月13日(火)読了
作品情報
タイトル 連続殺人鬼カエル男
著者 中山七里
シリーズ
初刊出版社 宝島社
レーベル 宝島社文庫
初刊発行日 2011年2月18日
書籍情報
出版社 宝島社
レーベル 宝島社文庫 な-6-2
判型/ページ数 文庫判/411ページ
初版発行日 2011年2月18日
版数 第25刷
発行日 2025年2月19日
定価(本体) 660円
購入日 2025年3月28日
【あらすじ】
マンションの13階からフックでぶら下げられた女性の全裸死体。傍らには子供が書いたような稚拙な犯行声明文。これが近隣住民を恐怖と混乱の渦に陥れる殺人鬼「カエル男」による最初の凶行だった。警察の捜査が進展しないなか、第二、第三と殺人事件が発生し、街中はパニックに・・・

詳細は下記の通り。
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第1章 吊るす 被害者は荒尾礼子。12月1日の早朝、飯能市のあるマンションの13階から全裸で口からフックで吊るされているのを発見される。現場にはひらがなで書かれたメモが貼られていた。埼玉県警の新人刑事・古手川和也は上司の渡瀬とともに捜査を始める。
第2章 潰す 被害者は指宿仙吉、72歳。12月5日の朝、廃車工場の廃車プレス機で潰された車のトランクで発見される。遺体のポケットから、おなじようなメモが見つかる。メモの内容から、犯人は「カエル男」と呼ばれることになる。古手川は、虞犯者のひとりである当真勝雄に対する捜査から、保護司・有働さゆりと出会い、さゆりのピアノによって、過去の心の傷の負担を癒されることになる。
第3章 解剖する 被害者は有働真人、7歳。有働さゆりの息子。12月11日の朝、佐合公園の砂場に、四肢が切断された上に、内臓はすべて切除されて躰体の外側に並べられているのを発見される。今までの犠牲者に対するある規則性が示されたことにより、飯能市の混乱は大きくなっていく。
第4章 焼く 被害者は衛藤和義、弁護士。12月19日の夜、河川敷の堤防で車椅子に座ったまま焼かれているところを近隣住民の通報によって発見される。飯能市は恐怖により大混乱となり、警察署に暴徒が押し寄せ、古手川は阻止のために大怪我を負う。そんな時、さゆりから、沢井歯科にいる当真勝雄を助けてほしいと連絡を受け沢井歯科に向かうが、そこで意外な事実を知る。
第5章 告げる 12月24日、古手川は、有働真人の母・有働さゆりに犯人逮捕による事件解決を告げに行く。
【感想】
三分の一くらい読んだところで、犯人を暴くということではなく、自然と犯人がわかる記述となっていたので、思ったよりひねりの無いストーリーなのかなと思ってしまったのですが、そのあと読み進めると、どんでん返しの繰り返しという驚きの連続の展開となり、見事に誘導されたというか騙されたというか、意外性MAXの結末のミステリーでした。責任能力や刑法39条についても考えさせられます。

本筋の「カエル男」による殺人事件とは別に、古手川の心の傷の過去の話や、ナツオという子どもの話が挿入されているのですが、自然とナツオと勝雄が重なっていくような書き方であり、それが最後の見事などんでん返しの誘導であり布石となっています。あとで思うと、真実のほうが有り得ることなのですが、私はナツオは勝雄だという思い込みからより異常な関係を頭で描いて読んでしまいました。古手川の過去の心の傷から、それをピアノで癒してくれるさゆりへの接近も、単なるサブストーリー的に捉えていましたが、結末をみると、この関係性があったからこそ最後のどんでん返しがより効果的に意外性をもたらせてくれます。

そういうストーリーと話の構成の見事さは面白くて素晴らしかったのですが、殺人の描写や古手川の暴徒や犯人との戦いの描写は、ちょっと目を背けるような表現が多くて、想像すると卒倒してしまいそうなところもあります。そこはもう少しソフトでもいいんじゃないかなと思いましたが、最後まで読むと、「カエル男」という呼び方も含めて、この物語に不気味さや異常性を与えるという意味では必要なのかなと思ってしまいました。ただ、そうだとしても古手川の戦いのシーンはちょっと冗長かなという感じはしました。

この物語は、ラストの一行に含みを持たせており、さらに続編へ続きます。ネットでこの順番で読むとしっくりとくると書いてありましたので、参考にしたいと思います。

 連続殺人鬼カエル男
 連続殺人鬼カエル男ふたたび
 嗤う淑女
 ふたたび嗤う淑女
 嗤う淑女 二人
 連続殺人鬼カエル男 完結編
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。